前回胃ガンは慢性胃炎が原因であり、
高齢者を中心に慢性萎縮性胃炎がおこると述べました。
慢性萎縮性胃炎が進行すると、
腸上皮化生という現象が起こります。
これは胃の粘膜が腸になるというものですが、
何故起こるのでしょうか?
胃炎というのは胃の炎症です。
炎症によって胃の細胞に傷が付きます。
細胞の中にある核にも傷が付きます。
核の中にあるDNAにも傷が付きます。
傷ついたDNAが修復されないまま細胞分裂を繰り返すと
変異と呼ばれる現象が繰り返されます。
無限に変異が繰り返されるとDNAが別の細胞のDNAへと変化する、
それが腸上皮化生です。
ところがそれで終わりではありません。
さらに変異を繰り返すと最終的にガン化するのです。
実際にガン細胞を顕微鏡で見ると
腸上皮化生が周囲を取り巻いているのを見ることができます。
このようにガンは偶然発生するものではなく必然的に発生するのです。
だから胃ガンを予防することもできるわけです。
生体検査をおこなって萎縮性変化や腸上皮化生を伴っていたら、
胃炎の治療(内服療法)を一定期間おこなう。
この胃炎を治すことが胃ガンの予防につながるのです。
私のクリニックでは
数年前から萎縮や腸上皮化生を伴う慢性胃炎に対して
積極的に予防的治療をおこなうことで胃ガンの発生率を
ほとんどゼロに近く抑えることができるようになりました。
ただし、60歳を過ぎると萎縮性変化は完治することはありません。
それでも治療によって胃ガンの発生が抑制されたので、
所期の目的は達成したと、考えて良いと思っています。